第42章 囮
「はい、おんぶです。」
そう言って、レンは加州の前に背中を向けてしゃがみ込む。
「え…、また…?」
それを見た加州は顔を引き攣らせた。
「またです。ほら、早く。」
「え、嫌なんだけど…。」
「反論は認めません。ここでは私がルールです。」
加州は、うっ、と言葉を詰まらせると渋々従い、レンにおぶさる。
「しっかり掴まっててくださいね。」
そう言って、レンは加州をしっかり抱えると、窓枠に飛び乗り、外に飛び出した。
『おい!誰かいるのか!』
ドアの向こうからくぐもった声が聞こえてきた。
囮がバレたのだろうか。
レンはさっとしゃがみ込み、窓の下へ隠れる。
『そこじゃない!侵入者は2階だって言ってたろ!』
『でも、ここにいたんだろ!?なのに鍵がかかってるなんておかしいと思わないのか!?』
『とにかく、先に2階だ!奴等逃げ足が早くて手こずってるらしいぞ!このままだと逃げられる!』
会話はそこで途切れ、辺りに静寂が戻る。
「この部屋を調べていれば大手柄だったでしょうに…。」
レンはぼそりと呟くと、壁に足をかけ、一気に駆け上がる。
「ひっ…!」
レンが前屈みになってくれたお陰で、振り落とされることは無かったが、凄い速さで走るので体にかかる重力はとても重い。