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君に届くまで

第6章 帰り道を探して



熱が下がった正午辺り。


燭台切のもとをレンが訪ねて来た。
さっきまで着ていた寝間着ではなく、ここに来た時と同じ格好だ。

「燭台切さん、方位磁針を貸してください。」

藪から棒になんだろう、と燭台切は思う。

「何処かに行くのかい?」

「はい。一度最初にいた場所に戻って、周囲を探してみようと思います。」

「そう。ここから近いのかい?」

燭台切はそう言って、箪笥から出した方位磁針をレンに手渡す。

「割と近いと思います。
ゆっくり歩いて2日半の場所ですから。」

「…え?」

ーちょっと待って。僕の聞き間違いかな?
 2日半って言わなかったか?この子。
 それに怪我まだ治ってないよね?

燭台切りは言葉に詰まっていると後ろから鶴丸が顔を出した。

「キミ、勘定がおかしくないか?2日半っていったら、かなりの遠出だぞ。」

「そうですか?ゆっくり歩いて2日半ですよ。探索してましたし、かなり寄り道もしました。
だから、今度は真っ直ぐ走ればいいんですよ。そしたら小一時間くらいで着くんじゃないですかね。」

ー走って小一時間…。
 どんな走り方したらそんな早く走れるんだ。
 それにぶっ続けで走るつもりなのか?マラソン選手でもあるまいし…。

2人は最早どこから突っ込んでいいのか分からず、言葉が出ない。

レンはそれを話の終わりと解釈する。

「それでは、行ってきます。夕飯には戻りますので、またお願いします。」

それだけ言うと近くの塀を軽々飛び越えて外に出かけて行ってしまった。

それを見送った鶴丸は思わず吹き出した。

「ははは!退屈させない御仁だな!」

「そうだね。常識が違いすぎるよ。」

「そういえば、あの子怪我はもういいのか?」

鶴丸は燭台切に問うと、彼にしては珍しく渋面を作った。

「熱は下がったけど、傷はまだ塞がってないんじゃないかな。
はあ…、まったく無茶しなきゃいいけど。」

「タフな子だな。」

鶴丸は呆れながら返す。
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