第41章 こんのすけの奪還
燃え盛る本丸。
大量の水が押し寄せてきたかと思えば、端から凍りついていく。しかもその氷には浄化の呪が込められていた。
自分の体からどんどんと力が抜けていく。
このままでは全て浄化され、自分は消え失せるだろう。
鴉はその様子を思い浮かべてしまい、全身に震えが走る。
ー消えてなるものか!
鴉はありったけの気を放出し、辺り一帯を覆う氷を弾き飛ばした。
何とか脱出したものの、悍ましい感覚は未だにこびりついたままだ。
『あの女、殺してやる…!』
走り出そうとしたところで、体が思う様に動かず、倒れ込んでしまった。
全身に力が入らず、震えて踏ん張れない。
『くそ…!』
鴉はそのまま撤退を余儀なくされた。
手元の氷は、その時の悪夢をまざまざと思い出させた。
鴉は、ひゅっと息を呑むと、慌ててレンを蹴り飛ばす。
レンは、蹴り飛ばされると同時に刀が抜けて傷口が開き、踏ん張りがきかずに倒れ込む。
だがすぐに起き上がると、僅かに咳き込み血を吐いた。
「…成程。何であの夜、追って来なかったのかわかりました。」
レンは口元の血を拭うと、ニヤリと笑って鴉を見る。
鴉はレンから逃げてしまった失態と、馬鹿にした様な彼女の笑いに、一気に頭に血を登らせる。
「お前…!!」
鴉は刀を構えると一気に駆け出し、止めを刺しにかかる。
レンは霧隠れの術を発動させ、目眩しをするが、鴉は構うことなく突っ込み、レンがいるだろう所を狙い一気に振り下ろした。
しかし、手応えはなく、ガキン!という音が響く。
「出て来い!!八つ裂きにしてやる!!」
鴉は怒りに任せて怒鳴り散らすが、それに対する返答は無く、四方八方に刀を振り回して探すがレンに当たらない。
そうこうしているうちに、霧が晴れ、視界が戻る。
だが、そこにレンはおろか、一緒にいた男の姿も跡形もなく消えていた。
気配を探るも、僅かの”気”も辿れなかった。
「くそ!!逃げられた!!」
鴉の悔し紛れの捨て台詞が静まり返ったロビーに響き渡り、辺りは騒然とし出した。