第41章 こんのすけの奪還
「あの時のお返しができると思うだけで、わくわくするよ!」
相変わらずの狂気を匂わせる満面の笑顔は、気持ち悪さを通り越して気味が悪い。
「お返し、とは何をする気なんでしょうね?」
レンはげんなりしながら、攻撃を次々と躱していく。
「勿論、君をズタズタにしてあげるよ。きっと君は赤がよく映えるよ。想像するだけでゾクゾクするね。」
予想はしていたが、それ以上にトンデモナイ返答にレンは更にげんなりする。
「…お断りします。」
渋面を隠すことなく、きっぱりと断る。
次いで、ガラ空きになった鳩尾に、硬い氷で覆った拳を真っ直ぐに叩き込んだ。
だが、鴉も見切っていたのか、後ろに飛んで衝撃を去なされてしまう。
「ムダムダ。君の動きじゃ俺には追いつけないよ。」
小馬鹿にした様に鼻で笑うと、振り上げた刀を思い切り振り下ろす。
レンは予測していた通りの攻撃を紙一重で躱し、鴉の返した刀を両手の甲で防いだ。
氷が僅かに砕けてシャラリと床に落ちる。
「早く降参したほうが痛い目みなくて済むよ。」
「遠慮します。」
レンは氷で覆った足で上段に蹴り上げ、首を刎ね飛ばすつもりで振り切るが、これも難無く避けられてしまう。
これは修行のし直しだな、と思いながら顔を顰めた。
「人間が俺に叶うはずないんだから、いい加減諦めなよ。ほら!」
鳩尾を狙って突き出された刀をギリギリで躱し、脇に挟み込む形で白刃を取るが、押さえていることが出来ず、刀が抜かれてしまう。
レンは踏ん張りがきかず、前へと態勢を崩した。
「終わりだ!!」
鴉が叫びながら、レンの左肺を刺し貫いた。
レンは全身に衝撃と痛みが走り、体が硬直する。
「痛い?痛いよね?もっと痛くしてあげ…」
鴉は最後まで言い切る前に、刀が抜けないことに気がついた。手元を見ると、柄と腕を押さえられている。
押さえられているだけじゃない。氷り始めていた。
それは、鴉に数日前の悪夢を思い出させる。