第41章 こんのすけの奪還
「見えた!あそこだ!」
女達は銃撃隊を越えて、バルコニーの手摺から下に飛び降りた。一般家庭の家の2階は優に超えているだろう高さに怖気付く様子はまるで無い。
ストンと降りると、そのまま出入り口を目指して走り出す。
「今だ!!」
合図と共に、出入り口にシャッターが下ろされ、封鎖される。
「放て!!」
号令と共に、一斉に発砲された。
今度は上の時の様にはいかないだろう。何せ、四方八方を人の壁で囲んでからの発砲だ。防ぐ事はまず出来ない。
そう思っていたのに、突然水の壁が現れて、銃弾は全て防がれてしまった。
俺は開いた口が塞がらなかった。
「何なんだよ、これ。」
仲間の呆然とした様な呟きが聞こえてくる。
「無駄だよ。君達が何人束になったって、あの子を捕まえるなんて出来やしない。」
突然真後ろから話しかけられ、驚いて振り向くと、そこには全身黒で統一された、どこか人間らしくない人が立っていた。
「君達は下がっていて。俺が相手をするから。」
ビリビリした空気に怖気付いた俺は、黙って横に逸れ、その人に道を空ける。
パシャンという音と共に水の壁が崩れ、女達が出て来た。
「…鴉だ。」
「からす?」
「あぁ。刀剣男士、って聞いたことあるだろ?」
俺は黙って頷く。
まさかあれが噂に聞く刀剣だって言うのか?
「あの人がそうだ。ただ、あの人は普通とは違うって聞いたことがある。」
「特殊なんだと。普通が”光”だとしたら、あの人は”闇”みたいな、な。」
隣から別の仲間が答える。
「なんだよ、その厨二病みたいなのは。」
「残虐で有名らしいぞ。”歴史を守る人”ってより、”殺戮を楽しむ人”って感じなんだってよ。」
どういうことかわからずに、首を傾げていると、ガキン!という音がフロアに響き渡る。
音を追ってそちらを見ると、驚いたことに女が手の甲で刀を止めていた。
「な、んなんだよ、あれ…。」
その一手を皮切りに、次々に攻防戦が繰り広げられる。
女は体術で、鴉は剣技で応戦する。
目で追うのがやっとの動きに、俺は度肝を抜かれ、へたり込んだ。
俺達だって、それなりに有事に備えて訓練しているが、これはあまりにレベルが違いすぎる。