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君に届くまで

第41章 こんのすけの奪還


女達はバリケードを次々に突破していく。
その間、僅かな時間すら止まることはなく、服の端すら掴めない。
段々と廊下が広くなっていく。出入り口が近い証拠だ。
このままでは出入り口に辿り着くのは時間の問題だろう。
一般者は避難したのか、廊下には警備の者しかいなかった。

一般者がいれば少しは足止めにはなっただろうか?
いや、あの動きでは、逆にこちらが不利になるだろう。
何にせよ、ロビーの警備隊で足止めできればいいが。

つらつらと考えながら、小さく見える女達の背中を追う。
次の角を曲がれば、2階バルコニーに出る。

だが、女達が角を曲がった瞬間、銃撃音がフロアに響き渡る。
彼方此方から、女性の悲鳴が上がった。
従業員だろうか。

女達を見ると、足止めには成功したらしい。

「沢田さん!」

「あぁ!一気に追いつくぞ!!」

俺は部下達に喝を入れる。










「追いついた!!」

「逃すか!!」

あと少しで手が届く、というところで女達が廊下からフロアへ躍り出る。

「嘘だろ!?そっちに行ったら…!!」

「蜂の巣になるぞ!!」

部下達は顔を青褪めさせて、侵入者達を呼び止めるが、それどころじゃない。

「お前等、伏せろ!!!」

今躍り出たら、巻き添えを食うのは俺達だ。



「放て!!!」

合図と共に一斉に発砲され、耳を塞ぎたくなる程の大音量で銃撃音が響き渡る。
頭上をヒュンヒュンと音を立てながら、銃弾が幾つも通り過ぎていくのを聞いた。

「嘘だろ!」

「無傷だ!」

廊下の向こうから悲鳴の様な声が聞こえてきて、慌てて起き上がると、角からフロアの様子を覗いた。

「嘘だろ…。本当に無傷だ。」

「盾だ。あいつ等、盾で防いだんだ。」

「あんな盾、どっから出したんだ?さっきまで持ってなかったよな?」

「それにしたって、一斉射撃で全弾浴びてるのに一発も当たらないなんてあり得るか?」

部下達の呟きは尤もだ。

女達は、そのままライオットシールドで築いた壁を踏み台にして軽々と越えていき、あっという間に姿が見えなくなった。
俺達は、唖然と事の成り行きを見守るしかなかった。
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