第41章 こんのすけの奪還
「ギィイィぃ…!」
何とも形容し難い断末魔を上げて、”それ”はぐったりとし、締め上げていた棒状の物を、ぽとりと落とした。
息があるから、死んではいないようだが…。
胴体を刺したのに生きているのも気味が悪いものだ。
レンは”それ”が落とした物を拾い上げる。
「あつ…!」
うっかり拾い上げたそれを落としそうになった。しゅー、という音と共に手が焼ける様に熱く、痛みが広がる。
「どうしたの!?」
加州は急いでライターをレン手元に持っていく。
そこには、火傷をした様に疎らに黒ずんだレンの手が照らし出された。
「ど、どうしたの!?これ!」
「コレを拾ったらこうなりました。」
拾い上げた物は筒だった。
白地に朱色で綺麗な唐草模様が描かれている。
触った感触は木に近い。
「これって、こんのすけの本体なのでしょうか?」
レンは、表に裏に、矯めつ眇めつ筒を眺める。
「そういえば、こんのすけは…。」
加州が近づいてみるも、結界は解けていなかった。
しかし、苦しそうな様子が消えている。
「邪気は消えたみたいですね。」
レンは加州の隣からこんのすけを覗き込み、触れようとする。
バチっという音と共に、手が弾かれた。
「まだダメですね。」
そう言うと、今度は天井に飛び移り、逆さまに立ち上がる。
レンの束ねた長い髪が垂れ下がり、尻尾の様だ。
バレッタを外したら、きっと幽霊みたいに見えるんだろうな、と加州は失礼な事を思う。
こんのすけが横たわる下には太極図らしき図柄が描かれていて、それを中心に別の図柄が広がる様に複雑に描かれている。