第41章 こんのすけの奪還
「邪気を出してるのって、明らかにコイツですね。」
「え?そうなの?確かに嫌な感じはするけど。」
「え?だって威嚇をする度に黒い靄が噴き出てますよ。」
「…何?黒い靄って?」
新発見だった。黒い靄はどうやらレンにしか見えていないらしい。
自分にしか邪気が見えないという事実に、レンは二の句が継げない。
数秒、沈黙が流れた後、レンは小さく咳払いをする。
「…気にしないでください。それよりコイツ、何か抱えてる様に見えませんか?」
「どこどこ?…ホントだ。何か抱えてるね。」
レンが手を伸ばして、抱えている物を取ろうとする。
すると、”それ”は取られまいと更に胴体を絞り、物を抱え込むと、レンに噛みつこうとする。
抱えている何かは棒状の物らしく、”それ”が動く度にゆらゆらと揺れる。
すると、後ろから呻き声が聞こえてきた。
「こんのすけ…?」
加州が呼びかけるも反応は無い。
「こんのすけに関係する何かを持っていそうですね。」
レンは”それ”から目を離さず言うと、ライターを加州に預ける。
それから胸元で十字の印を組むと、影分身を出した。
「何するの?」
加州は不安そうに尋ねる。
「コイツが締め上げている何かを奪います。」
そう言うと、影分身が”それ”に素早く掴みかかり、首と胴体を鷲掴む。
すると、しゅー、という音と共に、忽ち影分身の体は邪気に蝕まれ、肌の色が黒く変わっていく。
「あつ…い…!」
影分身が顔を歪める。
レンは、その様子を見て眉を顰めた。
そして素早く印を組むと、少し太めの氷千本を出し、”それ”の胴体を刺し貫いた。