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君に届くまで

第41章 こんのすけの奪還


こんのすけは、外から聞こえる僅かな音で目を覚ます。
体は相変わらず、焼かれた様に痛い。
力は入らず、四肢は投げ出したままだ。

暫くすると、小さくカチャンと音がして空気が動いたのがわかった。
今日で終わりだと悟る。
悔いはない、やれる事はやった、と自身を慰める。
せめて、誰が来たのか確認しようと薄ら目を開けると、そこにはいる筈のない人物が映った。

「ひどい…。」

顔を歪ませた加州だった。

「…な…ぜ…?」

こんのすけは驚きに目を瞠る。

「レンがこんのすけを奪還しようって言ったもんだから。」

加州は少し笑って答える。
こんのすけは目を瞬かせる。
あの方は、やること成すこと予想の斜めをいく方だ、とぼんやり思う。

「因みに、今来てるから。」

「…え…?」

「どうも。お久しぶりです。
しかし、あなたも散々な目に遭いましたね。」

知らない人間だとばかり思っていたら、レンだった。
見た目が変わり過ぎている。

「何はともあれ、先ずは術を解かないと話になりませんね。」

レンはそう言うと、こんのすけから視線を外し、部屋を見回す。

こんのすけは複雑な気分だった。
助かったという安堵と、2人に対する感謝。
しかし、同時にこのまま助かっても良いものかと不安が込み上げる。
前田はこんのすけの逃亡を許しはしないだろう。
そうなれば、自身だけでなく2人も危険に晒される。
それでは、本末転倒の様にも思う。

「待ってて。今助けるから。」

加州はこんのすけに優しく言った。

こんのすけは、ゆっくり目を閉じる。
自身を情けなく思う反面、泣きたくなる程、心遣いがありがたかった。
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