第40章 再び現代へ
何部屋か錠破りで開けて確かめていくが、目当ての部屋はなかなか見つからない。
今まで見てきた部屋はどれも似たようなもので、術が使われた様な痕跡も気配も無い。
ここにはいないかもしれない、と諦めの空気が漂い始める。
「次で最後ですね。」
「そうだね。この部屋でなければ、諦めて一旦帰った方がいいね。」
レンは手慣れた様子で解錠し、ドアを少し開けて中の様子を伺う。
「誰もいないね。」
加州はドアを開けると、疑いなく中に入っていくが、レンは薄ら警戒する。
というのも、レンは何かの気配を感じたからだ。
何の気配とも断定が出来ず、何となく入りたくない感じだ。
それでも、彼女も遅れて中に入ると手がかりがないか確かめる。
中に入ると、やはり何かの気配がある。だが、人は隠れていない。隠れるスペースも無い。
なんとも気持ち悪い感覚を持て余しながら、しきりに周囲を見渡す。
一方、加州は部屋に違和感を感じる。今まで見てきた部屋と何かが違う。
ガラス製テーブルがあり、1人掛けのソファーが4つ。対角線上にソファーが2つ。
ーそうか、本棚。
本棚に本がぎっしり入っているのだ。
他の部屋にも本棚や戸棚はあったが、物があまり置いていなかった。だが、この部屋の本棚には本がぎっしり詰まっている。
「レン、ちょっとこの本棚変だと思わない?」
「本棚、ですか?部屋全体じゃなく?」
レンは何かを警戒しながら加州に近づいていく。
「何か変なの?」
「はい。何かわからないけど、変な気配がするんです。」
レンも本棚を見ると、確かに本がぎっしり詰まっていて、違和感を感じる。
「確かに、この部屋だけ本がぎっしりってのも変ですね。」
レンは迷いなく観音開きになっているガラス戸を開けた。そして指で背表紙をすっとなぞっていく。
1段目、2段目となぞっていくと、一ヶ所だけ違和感があった。その箇所を今度は押してみる。
するとガコン、という音と共に本棚の隣に隙間が出来た。開き戸になった、と言った方が正しいかもしれない。
レンと加州は互いに顔を見合わせると、隙間に手を差し入れ、そっと開いてみる。
すると、そこには下へ続く階段が現れた。
「当たり、と見て良さそうですね。」
「行ってみよう。」