第6章 帰り道を探して
夜になり、行灯に火を灯す。
廊下を厨へ続く方へと歩いていくと、遠目に明かりが付いているのが見える。厨に着き、中を覗くと燭台切が料理をしていた。
「手伝います。」
「もう起きたのかい?具合はいいの?」
「お陰様でよく眠れました。」
「そう。よかったね。
それじゃ、ネギを刻んでもらえるかい?」
「はい。」
晩御飯だけは毎日作ってもらえる事になり、レンは手伝いに来たのだ。
こんのすけは、まだ戻ってこない。
まだ熱もあるし、食べ物を受け付けないだろうからと粥を作ってもらった。
具材は卵だけだが、ほんのり塩味がなんとも絶妙で美味しい。
「おいしそうに食べるね。」
燭台切が向かいの食卓に座りながらレンに声をかける。
「はい、おいしいですから。」
「はは、それだけおいしそうに食べてるとこ見ると作った甲斐があるよ。」
燭台切は少し嬉しそうに微笑む。
レンは良い意味でも悪い意味でも幼子の様だ、と燭台切りは思う。
悪意もなく、善意や慈悲もない。
温かみがなく清らかな気だ。
まるで少し懐いた手負の野生動物に似ている。
そんな事をつらつら考えていると、こちらでしたか、と声がかかる。声の主を探すとこんのすけが厨の戸口に立っていた。
ふと、燭台切はこんのすけに違和感を覚える。
どうして、主であるレンを探したんだろう、と。
主の居場所は気配でわかるものではなかっただろうか。
「薬をお持ち致しました。先程の大広間に置いておきましたのでお使いください。」
「ありがとうございます。」
「それなら、お風呂で汚れを落としてからの方がいいね。沸かしてあるから入ってくるといいよ」
いつの間に、とレンは思う。
面倒見のいい人だ。
「それなら、有り難く使わせてもらいます。」
もう何日もお風呂に入れなかったので、非常に助かった。