第5章 審神者任命
「…禍ツ神って、何ですか?」
「邪神って言ったらわかる?」
レンは首を横に振る。
「うーん、言葉だと難しいな。邪気はわかるんだっけ?」
「確証はありませんが、あの何とも言い難い、肌を刺す様な嫌な空気の事を言うのであれば…。」
「たぶん、それで合っていると思うよ。
それが凝縮した塊を思い浮かべられるかい?」
レンは想像する。
「それが襲いかかってきたら?」
「嫌ですね、逃げます。」
「はは、君ならそうなんだろうね。
けど、普通の人間はそうはいかない。
二代目の審神者は、禍ツ神となった刀剣に嬲り殺された。
その次の審神者も似た様な奴でね。同じ様に禍ツ神になった刀剣に嬲り殺されたんだ。」
「…そうですか。」
一言ぽつりとレンは呟く。
燭台切はレンがもっと怖がるかと思っていただけに拍子抜けした。
「…怖くないのかい?禍ツ神になり得る僕達が。」
「怖くはありませんね。…あなたは禍ツ神ではないでしょう。」
「これからなるかもよ。」
「ならないと思います。」
「…どうして、そう言い切れるの?」
「勘です。…強いて言えば、あなたは心が強い様に思うから。」
燭台切は目を丸くする。
勘です、ときっぱり言い切る様はいっそ清々しい。
「あっはっはっは!鶴さんじゃないけど、君って面白いね!」
それに強いと言われるのは、悪い気はしない。
「それで、結局あなたが警戒している事って、私が好き勝手に振る舞う事、ですか?」
「それもあるけど、君のせいで仲間が禍ツ神に堕ちること。僕はそれが一番怖い。
だから、こんのすけが何もしなくていいと言うのなら、君には文字通り何もしてほしくない。僕達に関わらないで。」
そう言って燭台切は冷たく笑った。
「…そうですか、わかりました。頼まれない限りは私からは関わりません。ただ…。」
「ただ?」
「ご飯を作ってください。」