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君に届くまで

第40章 再び現代へ


レンはまた歩き出し、加州もそれに倣う。
階段を探し、人目につかないように人通りの少ない時を狙い、こっそり降りる。
立ち入り禁止が多いせいか、人の気配が殆ど無い。
それに2階、3階と違い、完全なる個室が殆どなのだ。おかげで中の様子がまるでわからない。
レン達は、”KEEP OUT”とある立て札を素通りし、中へと入って行く。先程も来た所だが、鍵がかかっていて中を確かめられなかったのだ。

「ほ、ホントにやるの?」

「やりますよ。出来る限りをしなければ諦めがつかないじゃないですか。」

レンは加州を振り返ることなく、淡々と答えながら、ドアに耳を付け、中の様子を伺う。

「…誰もいないみたいですね。」

そう呟くと、鞄から布に包んだ極細い千本を2本取り出した。

「何それ?」

加州は不思議そうにレンの手元を覗き込む。

「千本です。これは錠破りの時に使うので武器にならないヤツなんです。」

レンは両手で千本を持つと、鍵穴に1本突っ込んだ。
次いでチャクラを練り、指先に集中する。
すると見る間に鍵穴周辺に霜が降りる。

加州は非現実的な出来事に言葉を失い、固唾を呑んで見守った。

2本の千本を使い、カチャリカチャリと何回か試す内に手応えがあった。レンはそのまま、押し込み鍵を回す。
カチャンと解錠の音がした。
レンはゆっくりとドアノブを回し、中を伺う。

「…大丈夫そうですね。」

「すごいね。何でもありじゃん。」

加州はぽかんと口を開けながらレンを見る。

「何でもありじゃないですよ。弱点だってありますから。」

レンは加州に目もくれず、中へと入る。

「え?レンにも弱点あるの?」

「…私を何だと思ってるんですか…。」

「知りたい。教えて?」

レンは少しの批難を乗せて加州を見やるが、彼はレンの”弱点”に食いつく。

「弱点ですよ?教える訳ないじゃないですか。」

「…ケチ。」

加州は口を尖らせながら、レンに続いた。
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