第39章 〜〜幕間3〜〜
「前田様!お待ちください、前田様!何もそこまでなさらなくても、あの本丸にいるのは刀剣だけで御座います!」
こんのすけは指示を出す役人に捲し立てる。
「いや、いるな。でなければ浄化は成されない。
それにあいつが"人間がいる"と断言している以上、必ず潜んでいる。」
前田と呼ばれた役人は、こんのすけの奏上に耳を貸すことはなく、こんのすけを見ることもない。
「しかし!しかし、だからと言って刀剣達まで焼き討ちにするのは如何なものでしょうか!あの本丸には重傷の者が多数居るのですよ!?あんまりで御座います!」
こんのすけは、尚も食い下がる。
ここは引けない。あそこに乗り込ませてはならない。
断じてならない。
前田はその断固の意思を見て取り、顔を顰める。
「あれらは生きてはいない。手入れをするだけでも一苦労だ。ならばいっその事有効に利用すべきだとは思わんか。」
前田は面倒そうに淡々と言葉を発する。
その言葉を聞いて、こんのすけの歩みが止まる。
振り向いた前田の手には、本丸の抹消申請書と新規建設申請書のファイルが握られていた。
「ま、まさか、禍ツ神として顕現させるので御座いましょうか…。」
こんのすけの声には絶望と落胆が入り混じる。
その声を聞き、前田は益々顔を顰めた。
「…お前は誰の僕なのか、今一度思い知るべきだ。」
伸ばされる手をこんのすけは振り払う気にもなれなかった。
もう、どうにも出来ない。
もう、終わりだ。
ここが自身の限界なのだと悟る。
こんのすけは、静かに目を閉じた。