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君に届くまで

第38章 現代から帰還


ふと、目が覚めた。
いつの間にか、横を向いて寝ていたらしい。
隣で眠る安定が目に入る。

ぼんやり眺めていると、う〜ん、と寝言を言いながら背を向けてしまった。

ピクリともしない安定をずっと見てきたせいか、寝返りを打った、ただそれだけのことが微笑ましく思う。

俺は小さく笑って、反対側に寝返りを打った。
レンが寝ている筈だったのだが、居なかった。一つ空けて向こう側に、眠っている鶴丸が見える。

不審に思って少し体を起こすと、柱の側に膝を抱えて蹲るレンの姿が見えた。

「レン?」

小さな声で呼びかけるも返事がない。

俺は起き上がり彼女の側に近づく。そっと背中に手を当てると、ビクンと跳ねるように背中が揺れる。
次いで、ゆるゆると顔を上げてこちらを見るレンの瞳は、まるで虚空の様で、いつもの無表情が更に無表情となり凍りついたようだ。

俺は思わず息を呑んだ。
寝ている間に何があったのだろう。


不意に燭台切の言葉が蘇る。

“夢はそれしか見ないんだって言ってたよ”

「…もしかして、夢を見たの?」

レンは黙って頷き、また膝に顔を埋めてしまう。
夢を見る度にこんな風になるのでは、確かに気が休まらないだろうな…。
掛ける言葉も見つからず、かと言って放ってもおけない。
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