第37章 現代へ
「お待たせ致しました。」
加州は待ってましたと言わんばかりに、厳選した雑誌を手に取ると、レンの手を引き、案内された席へと移動する。
「どの様に致しましょう?」
「髪の長さは変えずに、全体的に整えてください。あと、パーマをゆるふわな感じでかけたいんですが。こんな感じで。」
加州はレンに確認する事なく、独断で決めていく。
店員は戸惑いながら、レンを見た。
「…その人の言う通りでお願いします。」
彼女は疲れた様に頷いた。
「わかりました。ただお客様は髪に厚みがある様ですので、少し梳いた方がいいかと思いますが、どうされますか?」
「じゃ、それで。あと、軽くメイクもお願いします。」
「わかりました。出来たらお呼びしますので待合室でお待ちください。」
「お願いします。」
加州は満足気に去っていく。
レンはどうにでもなれとされるがままになった。
「お疲れ様でした。いかがでしょうか。」
髪を切るだけでなく、髪に何かを施され、挙句化粧までされた。
だが、我慢した甲斐はあったかもしれない。
未だかつて、こんなに自分が別人に見えたことは無かった。
「現代の技術、恐るべし。」
レンの呟きに店員は苦笑いだ。
「お連れ様をお呼びしますね。」
「あ、はい。」
加州が店員に呼ばれて、レンのもとに行くと、そこには別人と見間違える程の女の子がいた。
「レンって美人さんだったんだね。」
ぽかんとしながら加州が呟く。
「自分が別人に見えたのは初めてです。」
レンもぽかんとしながら答えた。
「どう?感想は。」
「我慢した甲斐がありました。」
あんまりと言えばあんまりな回答に、加州は吹き出した。
「気に入っていただけてよかったです。」
ー本当に大変だった。主に洗髪が…。
店員はレンの、ざらざらでごわごわで洗う度に泡が真っ黒になる髪を思い出し、思わず遠い目をした。