第37章 現代へ
時は少し遡る。
「君の彼女、面白い子だね。」
「彼女じゃないよ、親戚の子なんだ。ちょっと変わってるんだよね。」
加州は服の会計をしながら、店長に返す。
あまりの手応えのなさに意気消沈する。
「ファッションに興味ない女の子なんて初めて見たよ。」
店長も苦笑いだ。
「何かと苦労してきた子でさ。たぶん、こういった物に触れる機会も無かったのかもしれない。」
「そうなんだ。」
店長は加州の説明を聞き、暫し考える。
「ねぇ、美容院連れてってみれば?」
「美容院?」
「そ。この先を右に曲がって直ぐの大通りに出る一歩手前にいい店があるんだよ。女の子だし、髪型ががらりと変われば印象も変わるでしょ。ついでにナチュラルメイクでもして貰えば別人になるかもよ。」
加州は店長のアドバイスに目を輝かせる。
「それだ!」
加州は店長と2人で頷き合った。
「というわけで、レンちゃんには大変身して貰おうと思って。」
「いや、望んでないですから。」
「いや〜、意外に気分が上がるかもよ?」
「そもそも目的が違うでしょうが。現代に何しに来たと思ってるんですか?」
レンは呆れ返り半眼で加州を見るも、彼は全くへこたれない。
レンを横目にヘアーカタログを端からひっくり返す。
「これ、いいかもね。あ、でもこっちも捨てがたい。う〜ん、これとこれの中間位で…」
加州は真剣にカタログと睨めっこをしながら、髪型を厳選していく。
レンの言葉はもう耳に入らない。
彼女は大きくため息をつきながら、加州の様子を眺めていた。