第37章 現代へ
加州達はそのまま裏通りを歩いていくと、服屋と思しき店が見えてきた。
ドアのすぐ脇に服を着せたマネキンが置かれている。
表の殆どがガラス張りで、中には棚やハンガーに色とりどりの様々な服が置かれている。
外観は赤を基調とし、黒で蔦模様が描かれている、シンプルだが中々目を引くデザインだ。
加州は店を見たまま立ち止まる。
レンはそのまま素通りしようとして、隣に加州がいないことに気がつき、振り返った。
「行きますよ。」
レンは声をかけるが反応がない。
「どうしました?」
レンが加州を覗き込もうとすると、急にレンを振り向き、がしりと手を握る。
「この店に入ってみよう。」
「…藪から棒に何ですか?」
レンは呆れ顔で加州を見返す。
「政府に潜入したいんでしょ?なら目立たないように、服を調達すべきだと思うな。俺達の格好って現代じゃ浮いてるし。レンだって、さっきじろじろ見られてたでしょ?
木を隠すなら森、ってことわざもあるくらいだし。ね?」
加州は一気に捲し立てる。
自分でもよくこんなに言い訳が思いつくな、とは思うが、この店には絶対入ってみたい。
絶対これぞ一張羅!っていうのがある気がする。
ここは是非とも押さえておきたい!
対してレンは若干引き気味だ。
正直興味がない。
動いやすい服ならば何でも構わないタイプだ。
気に入れば男物だろうと女物だろうと気にも止めないだろう。
「…本当に必要なんでしょうか?」
「うん、絶対必要!」
加州の目が輝いている。
何となく避けて通れない空気を感じて、レンは黙って折れた。
「…残りの残金を常に気にしてくださいね。」
そっと忠告するのが精一杯だった。