第37章 現代へ
「金なんて、何処にあったんですか?よくあの火事で無事でしたね。」
店を出た後、レンは不思議に思っていた事を加州に尋ねる。
「あぁ、掘り出した時に、中に一緒に入ってたんだよ。使えるかな、と思って持ってきたんだ。」
「成程。じゃ、節子さんが一緒に入れておいたって事ですか。」
「そ。さすが節子さんだよね。」
加州は嬉しそうに顔を綻ばせる。
そうなると不思議なのが、
「何故節子さんは、加州さんがあの店に行く事を知っていたんでしょう?」
ということだ。
レンがこの地に来たことは全くの偶然である。レンが来なければ彼等は今も封印されたままだったろうから、床下を掘り返すこともなかっただろう。そうなれば、金などただの持ち腐れだ。
しかし、初代は金が必要だと判じて用意しておいた。
実に不思議な事だ。
「節子さんはね、不思議な力を幾つも使える人で、最たるものが予知だったんだ。」
レンは驚く。
「予知、ですか。」
予知能力。聞いたことはあるにはあるが、かなりの眉唾ものである。
俄には信じられず、レンは言葉が続かない。
「あー。信じて無いでしょ。ホントに凄かったんだから。」
加州はレンの表情から信じていないことを読み取り、頬を膨らませる。
「若い時はもっと凄かったみたいだよ。社にお務めしていた時は、行列が出来るくらい、大勢の人が節子さんを頼りに来たんだって。」
「へぇ…。」
「その人の運命を見定めて、いい方向に導いたり。家を透視して悪いモノを言い当てたり。
本丸でもあったんだよ。誰かが怪我をすることを予知して、その人を部隊から外したり。邪気が出る場所を当てて清めたり。
とにかく、凄かったんだから。」
加州は力説するが、レンにはいまいちピンとこない。
「きっと節子さんは、レンのことを知っていたんだと思う。こうなることをわかっていて、金子を用意してくれてたんだと思うよ。」
「凄い方だったんですね。」
…若干棒読みな感じは否めないが、まぁ良しとしよう。