第37章 現代へ
「こちらをお訪ねになった際、節子さんは私にある頼み事をしていきました。
“遠い未来に、この加州清光がもう一度こちらのお店を訪ねるでしょう。その時にこの金を換金してほしいのです。"と。」
加州とレンは顔を見合わせる。
「…そうなんですか?」
「うーん…あったような、なかったような…。」
加州はしきりに首を傾げる。
「先程の金をもう一度見せていただけませんか?」
藤崎は穏やかな笑みを浮かべて、加州を見る。
その流れを受けて、レンには疑問が浮かぶ。
「…先程、身分を証明できるものが無ければ換金出来ないと言われたばかりです。
何故、あなたは見ず知らずの、節子さんの知り合いと言うだけの私達に換金してくれるのですか?」
簡単な事ですよ、と藤崎は笑う。
「昔、節子さんにはお世話になりました。その恩返しです。
今から25年程前になりますか。不況の煽りを受けましてね、この店を手放そうか手放すまいかという、崖っぷちに立たされたことがありました。
私は藁にもすがる思いで、節子さんを訪ねたのです。
色々とアドバイスをいただきまして、言う通りに致しましたら、なんとか危機回避できました。
それ以来のご縁でございます。」
藤崎は昔を懐かしむ様に、深く笑った。
レンは納得し、加州を見る。
加州も納得した様子を見せて、レンに頷き返した。
「藤崎さん、お願いできますか?」
彼はそう言って、金の延棒を差し出した。
「承ります。」