第37章 現代へ
それは困る。大いに困る。そんな事をすれば、自分達の存在が明るみに出てしまう。
加州は焦って、首を横に振る。
「いや、ちょっと困ります。」
すると、店員は僅かに不信感を浮かばせる。
「…失礼ですが、どちらのお住まいですか?
どういった経緯でこちらを手に入れたのでしょう?」
疑われている様だ。どう言い訳しようか…。
「これは、彼の形見です。最近遺品の整理をしていたら出てきた物で、ある施設の通行証だそうです。」
レンが間髪いれずに淡々と答えた。嘘は言っていない。
「形見、ですか。失礼ですが、どなたのですか?」
店員は、尚も掘り下げるようだ。
加州は言葉に詰まる。
「誰のって言われても…。」
初代の名前はできたら出したくない、と加州思う。
それを見た店員は、更に不審がる。
「…申し訳ありませんが、身元のはっきりしない方に、換金することはご遠慮頂いております。ですので、こちらはお返しさせていただきます。」
金と通行証をトレイに入れて戻されてしまった。
出だしから幸先の悪い事だ。
加州が顔を顰めて俯いていると、レンが切り出した。
「わかりました。身分証を必要としない質屋はここら辺にありますか?」
「そんな店は無いと思います。どこに行っても身分証の提示は求められると思いますよ。」
店員は怪訝そうにレンを見る。
「…無い店もあるかも知れないと思うのですが、本当に心当たりありませんか?」
レンは尚も食い下がった。
通貨はあって損はない。換金できるならして是非ともおきたい。
「何かお困りですか?」
その時、店員の後ろから壮年の男性が現れた。