• テキストサイズ

君に届くまで

第37章 現代へ


それは困る。大いに困る。そんな事をすれば、自分達の存在が明るみに出てしまう。
加州は焦って、首を横に振る。

「いや、ちょっと困ります。」

すると、店員は僅かに不信感を浮かばせる。

「…失礼ですが、どちらのお住まいですか?
どういった経緯でこちらを手に入れたのでしょう?」

疑われている様だ。どう言い訳しようか…。

「これは、彼の形見です。最近遺品の整理をしていたら出てきた物で、ある施設の通行証だそうです。」

レンが間髪いれずに淡々と答えた。嘘は言っていない。

「形見、ですか。失礼ですが、どなたのですか?」

店員は、尚も掘り下げるようだ。
加州は言葉に詰まる。

「誰のって言われても…。」

初代の名前はできたら出したくない、と加州思う。
それを見た店員は、更に不審がる。

「…申し訳ありませんが、身元のはっきりしない方に、換金することはご遠慮頂いております。ですので、こちらはお返しさせていただきます。」

金と通行証をトレイに入れて戻されてしまった。
出だしから幸先の悪い事だ。
加州が顔を顰めて俯いていると、レンが切り出した。

「わかりました。身分証を必要としない質屋はここら辺にありますか?」

「そんな店は無いと思います。どこに行っても身分証の提示は求められると思いますよ。」

店員は怪訝そうにレンを見る。

「…無い店もあるかも知れないと思うのですが、本当に心当たりありませんか?」

レンは尚も食い下がった。
通貨はあって損はない。換金できるならして是非ともおきたい。

「何かお困りですか?」

その時、店員の後ろから壮年の男性が現れた。
/ 1263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp