• テキストサイズ

君に届くまで

第36章 新しい主



「…、…さん、加州さん。」

控えめに呼ばれて振り向くと、レンが心配そうにこちらを見ている。

「大丈夫ですか?」

心配してくれるのは嬉しいが、

「顔、真っ黒。」

真っ黒なままじゃ、締まりがない。
なんだか可笑しくなる。

「あははっ。」

嬉しくて、哀しくて。
笑いたくて、泣きたくて。
感情が大忙しだ。

レンはそんな俺を怪訝そうに見るばかりで益々可笑しくなる。

「あはははっ!」

あまりに笑ってたらレンが不貞腐れてしまった。

「ごめんごめん。節子さんのこと思い出してたから、つい。」

「理由になってないと思います…。」

レンは仏頂面を浮かべる。
節子さんと比べて、強くて、男勝りで、淑やかさがまるでないけれど。
けれど、この人が俺が選んだ人。

「レン、あんたが俺の新しい主だ。」

俺はレンを抱きしめながら呟いた。
/ 1263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp