第36章 新しい主
節子さんとの出会いは、本丸の節子さんの部屋だった。
俺はこの本丸の初期刀として、彼女の神気を受けて顕現した。
「あー、川の下の子です。加州清光。
扱いづらいけど、性能はいい感じってね。」
「まぁ、綺麗な方ね。赤がよく映えてるわ。」
「あなたが俺の新しい主?」
「えぇ、そうよ。節子というの。」
「節子さん。俺の新しい主!よろしくね!」
そう言って俺は節子さんに抱きついた。
顕現できたことが嬉しくて。
彼女の神気が温かくて。
これからを思うと胸が躍った。
それから程なくして、二振り目が顕現した。へし切り長谷部だった。
「へし切長谷部、といいます。主命とあらば何でもこなしますよ。」
「まぁ、凛々しくて真面目そうな方ね。
へし切さん、とお呼びすればいいかしら?」
「できればへし切ではなく、長谷部と呼んでください。」
「わかりました、長谷部さん。私は節子と言います。」
「主、よろしくお願いします。」
それからは、今剣、五虎退、骨喰、歌仙と仲間が増えていった。
長谷部が主呼びを崩さなかったお陰で、皆、彼に倣って節子さんを”主”と呼んでいた。
節子さんって名前で呼ぶのは俺だけだった。
でも彼女はそれを受け入れてくれていて、なんだか嬉しかった。”トクベツ”になれた様な気分だった。
「三日月宗近。打ち除けが多い故、三日月と呼ばれる。よろしくたのむ。」
三日月が顕現した時はおもしろかったな。
節子さん、ぽかんとしたまま、挨拶を返すことも忘れて三日月を見つめてたっけ。
まぁ、無理もないけど。俺達刀剣の目から見ても、雅で綺麗だと思ったから。