第36章 新しい主
炭と化した畳を全て剥がし見てみると、一箇所だけ、土の山になっている所があった。
「たぶんこれだ。」
そこを掘り返してみると、両手で持てるくらいの横に広い壺が2つ出てきた。
中を確かめてみると、先程記憶で見た通り通行証と簡易転送装置が手紙と一緒に入っている。
手紙は、記憶には含まれていなかったような…。
手に取って確かめてみると、”清光へ”と綺麗な文字で書かれている。
節子さんの字だ。
俺は大きく目を見開いた。
手が震えて、上手く開けられない。
まさか、今になって節子さんの声を聞けるなんて思ってもみなかった。
“清光へ
この手紙を開けているということは、新しい主をあなたは選んだということかしらね。
それでいいのよ、清光。
私はあなたが過去に縛られず、前を向いて生きていけることがとても嬉しいわ。
あなたが私を最初で最後の主だと言ってくれたことは、私にとってとても幸せなことだったわ。
ありがとう、清光。
けれど、私は死に逝くさだめ。
あなたと私の宿命は、決して交わることはないわ。
あなたはあなたの運命をしっかりと生きてください。
それが私の願いよ。
あなたの幸せを天国からいつも祈っているわ。
どうかあなた達が、つつがなく穏やかに生きていけます様に。
節子”
「節子さん…。」
俺は堪えきれず、涙をぼろぼろと零しながら手紙を読んだ。