第36章 新しい主
レンはそれを横から覗き込み、次いで家屋を見上げる。
「加州さん、ちょっと下がってください。」
「どうするの?」
「風で飛ばしてみます。」
「え?」
レンは返事を待たず印を組む。
「風遁、風圧連弾!」
先程、時間遡行軍を弾き飛ばした技らしい。立て続けに3発の破裂音が鳴り響き、炭の柱が1本ばらばらに弾き飛ぶ。
「効果無いですね。」
レンはそう呟くと、別の印を組み始める。
「風遁、カマイタチ!」
これも大きな柱が数本割れた位で、大した効果が無い。
レンは少し顔を顰める。
「…しょうがない。これはやりたくなかったけど…。」
そう呟き大きく深呼吸すると、また別の印を組み始める。
両手から風の嵐が吹き出した。
「みなさん、ギリギリまで下がってください。危ないですよ。」
彼等を振り返り注意喚起を促すと、レンは風向きを確認し風上に立つ。
「風遁、気流乱舞!」
なるべく家屋の正面真ん中に入る様に、狙いを定める。
レンの両手から吹き荒れた乱気流は、竜巻の様に炭の山を巻き上げると、周辺に撒き散らす。
近くの家屋にも真っ黒な柱が数本直撃し、灰埃が舞い上がった。
「すげぇ〜…。」
彼等は、あまりの威力にぽかんと口を開けてその光景を眺める。
「よし、これで探せますね。加州さん、どこら辺ですか?」
「レン…。顔真っ黒だよ。」
「知ってます。炭を大量に被れば誰だってこうなりますよ。」
レンは至極真面目に答えた。