第36章 新しい主
加州に続き、沖田組の家屋に来た。
とはいっても、家屋とは名ばかりの炭の山と化してはいるが…。
それを見て加州はげんなりする。
ここから床下を掘り出すのは骨が折れそうだ。
「…よく、大和さんの戦装束無事でしたね。」
レンもげんなり顔で見ていた。
「ね、ホントに奇跡的だよね。」
大和守はレンの隣に並びながら苦笑する。
「で、現代に行く方法って何ですか?」
レンは加州に尋ねた。
「俺達の部屋の床下に、節子さん…初代審神者が、通行証と簡易転移装置を残してくれたんだ。」
彼等は驚き、瞠目する。
「何で今まで黙ってたんだ?」
鶴丸が不思議そうに尋ねる。
「たぶん、記憶が封印されていたんだと思う。何がきっかけかわからないけど、さっき突然記憶が蘇ったんだ。」
加州は初代審神者を思い浮かべる。
不思議な力を幾つも使える人だった。その力を駆使して自身の記憶を加州に植え付けたんだろうと思う。
「それがあると、現代に行けるんですか?」
「うん…。ただねぇ。これ掘り返せるかな…。」
加州がレンの問いに頷きながら炭の山に足をかけると、ぎしぎし、バキバキ、と嫌な音が鳴る。
次いで、手で幾つか屑を退かすと忽ち真っ黒になり、彼は自身の両手を眺めてため息をついた。
「俺、汚れる仕事嫌いなんだよね。」