第36章 新しい主
「俺達は一兄も認めたレンに主になってほしい。
レンなら俺の全てを賭けられる。」
「僕もレンさんになら、全身全霊を賭して忠誠を誓います。」
「な、何もそんな大袈裟な…。」
「俺達は、守刀だ。主を守ってこそ、その真価を発揮する。」
薬研は晴れやかに笑う。
「一兄が認めたからってだけじゃないが、俺はレンが好きだ。ちょっとズレてるところはあるが、温かみがある優しい人だと思う。」
「僕もレンさんが好きです。ずっと一緒にいたいと思っています。」
薬研と五虎退は屈託ない笑顔をレンに向ける。
やっと平和な時代がきた…。
加州はぼやける目元の涙を拭う。
生き残った甲斐があった。
節子さんに忠誠を誓った俺だけど。
生涯の主はあなただけだと思っていたけれど。
だけど、俺はレンを選ぶよ。
あなたより強くて、あなたより頼りないこの人を。
「俺は特別レンの何かを見てきたわけじゃないけど。だけど、俺もレンに忠誠を誓う。薬研達が信じるレンを信じる。」
加州は穏やかに笑う。
「僕も。この身の内に流れる、温かくて清らかな神気を信じる。レンに忠誠を誓う。」
大和守も加州の隣で晴れやかに笑う。
レンは、それを見て、何とも困り果てた表情を浮かべていた。
その時、突然思い出したかの様に、加州の中に初代審神者、節子との会話が蘇る。
『その時が来たら、これを使いなさい。』
初代に額に人差し指と中指を当てられ、そう言われると、自分の記憶ではない記憶が流れ込む。
沖田組の部屋の床下に隠してある壺。その中に現代で使える通行証と簡易転移装置が入っている。
加州は弾かれた様に立ち上がった。
ーたぶん記憶が封印されていたんだ。
「現代に行く方法がある!」