第36章 新しい主
寄り添った大和守を泣きそうな顔で見返すレンを、彼等は温かい気持ちで見守る。
1人で過ごす日々はとても寂しかっただろう。人との関わり方を忘れてしまうくらいには、苦悩の連続だっただろうから。
これからは、自分達がレンを守る。孤独にさせない。
どんな時も一緒にいようと、強く心に決める。
そんな中、レンの手を握る者があった。
その手の先を見ると、薬研が真剣な顔でこちらを見ている。
「レン。俺の主はレンだ。何処へでもついていく。剣となり盾となることを誓う。」
急に言われ、レンは戸惑う。
「どうしたんですか?急に…。」
「これは助けてもらってからずっと考えていた事なんだ。」
薬研は穏やかに笑う。
「助けてもらったあの日、俺は…俺達は一兄に会ったんだ。」
彼は少し俯き、寂しそうな顔をした。
「一兄は人間を恨んでいた。俺達は刀剣の中でも特に審神者に酷い目にあった口でな。それは惨い扱いだったんだ。」
薬研が兄弟達を見ると、彼等は無言で頷く。
「その一兄がレンに応えて、俺に体を分けてくれたんだ。」
「僕達もその夢見たんです。薬研はもう大丈夫だ、と教えてくれました。」
「…うん、見た…。」
五虎退と鳴狐が頷く。
「一兄は折れた後、刃先だけが残っていたんだ。普通は折れたら刀は消えてしまうものなのに。俺達はその刃先を大事にしまっておいた。」
「薬研兄さんが目を覚ました日に確かめたんです。」
「確かに俺達は大事に箱にしまっておいたのに、その箱の中は空になっていた。」
「一兄の夢は夢じゃなかった。本当だったんです。」
「その時に俺達は思ったんだ。一兄はきっとレンの神気を受け入れたんだ、認めたんだって。その時から、俺はずっとレンを見てきた。」
レンを正視する。
その横に五虎退が並ぶ。