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君に届くまで

第36章 新しい主



「だからって、何で1人で行こうと思ったの?」

加州は頬を膨らまして、半眼で詰め寄る。

「そうだよ。そこは相談してよ。」

「僕達だって刀剣なんだから、そこは頼ってほしいかな。たまにはカッコつけさせてよ。」

大和守も頬を膨らまして詰め寄り、燭台切も苦笑しつつも便乗する。

「それはすみませんでした…?」

「なんで疑問系なんだよ。」

太鼓鐘が突っ込む。

「いや、相談て言われても、何をどうしていいのやら…。」

レンは途方に暮れたように彼等を見る。

「さっきみたいにさ、”今から、こういう事をしようと思うんだけど、どう思う?”って聞くとか。”今こう考えてるけど、あなたはどう思う?”って聞くとか。あるじゃん」

乱が教えてみるも、レンはどこか腑に落ちない様子だ。

「…もしかして、何の為に相談するのか分からない、とかじゃないよね?」

加州がふと思いついた様に尋ねると、

「…もしかしなくても、分かりませんね…。」

レンは彼等から視線を逸らすと言いづらそうに静かに言った。

はあ〜…。とため息の大合唱が鳴る。

レンは困り果てる。
これも1人で過ごしてきた弊害だろうか。
人の思いを理解する必要が無い生活は、相談を必要としない。勿論、連絡や報告もだ。
全て自分の判断だけで事足りる。

そんな事をつらつらと考えていると、加州がレンの頭に手を置き、ぽんぽんと優しく叩く。
レンは戸惑いながら加州に目を向けると、彼は困った様に笑っていた。

「レンはずっと1人で頑張ってきたんだね。」

加州は大丈夫だと言外に言うようにレンを撫でる。
その言葉にその仕草に、今までのことが走馬灯の様に過ぎる。
何故かレンの中に込み上げるものがあった。
今までの生活に何の不満もなかった筈だ。
なのに、嬉しいとも悲しいとも違う、膨れ上がる何かに、不意に目頭が熱くなる。
レンは振り払う気には到底なれず、されるがままになっていた。

「レン、これからは僕達がずっと一緒だからね。」

大和守がレンに寄り添う。
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