第36章 新しい主
「こんのすけって、連れ戻す必要があるの?」
広間に連れ戻されたレンは刀剣達に囲まれる。
「連れ戻せたらいいなってだけで、何が何でも連れ戻そうとは考えていませんよ。」
「どうして連れ戻そうと思ったの?」
大和守に引き続き、燭台切も問いかける。
「政府の…、特にここを管轄している奴に、効果的にダメージを与えたいんですよ。」
レンはそう言うと、彼等を見渡した。
「ダメージってどうやって?」
厚は戸惑いつつもレンに問いかける。
「みなさんは、先程の時間遡行軍の正体を初めて知りましたよね?」
レンからの問いかけに、彼等は一様に頷く。
「けれど、それがそもそも可笑しな話なんですよ。何故、この事実が公にされていないのか、疑問に思いませんか?」
「そもそも政府は知らなかったんじゃないの?」
「レンだから思いついたことなんじゃないか?」
太鼓鐘と鶴丸が揃って怪訝な顔をする。
「私はそうは思いません。他の本丸がどれだけあるか知りませんが、これを試した人がいないなんて考えられないと思います。それに…。」
レンは目元を険しくする。
「奴が政府側にいるんですから、時間遡行軍の正体を、派生を知らないはずがないんです。」
そこでレンはニヤリと笑う。嫌な笑い方だ。
彼等は思う。
普段無表情なのに、そういう笑い方はできるんだ…。
「これを大々的に公にしたら、あいつらはさぞ困るでしょうね。もしかすると、お家お取り潰しだってあり得るかもしれませんよ。」
「その為にこんのすけを?」
大倶利伽羅が顔を顰めながら尋ねる。
よかった。いつもの無表情に戻った。
「はい。より効果的に、大々的にこの弱点を使いたいので、政府の内情を知りたいんです。」
「成程ね〜。それでこんのすけか。」
太鼓鐘が手を後ろ頭に持っていきながら、納得できた、と頷いた。