第5章 審神者任命
「本日は、新たな審神者を任命するために参りました。」
「それってやっぱり…。」
「…この人、ですか?」
加州と堀川はこんのすけを見ながら問う。
「…皆さまもお気づきかと思いますが、この方が来たことで、皆さま方の封印は解けました。更には、この広間周囲の邪気が薄らいでおります。もちろん、皆さま方の邪気も。」
こんのすけがそう言うと、皆一様に下を向いた。
レンは話の意味が分からず、ついて行けないでいる。
「というわけですので、あなた様にはこの本丸の主となっていただきたいのです。」
こんのすけはレンに向き直り改めて願い出る。
もちろん、レンの答えは…
「いやです。」
当たり前だろう。誰がそんな訳の分からない役割を引き受けたいと思うのか。
何が「というわけ」だ。どういう訳だ、それは。
一同は面食らった顔をしていた。
「あっはっはっはっは!!」
と思ったら鶴丸が突然大笑いをし出した。
残りの面々は当惑して彼を見る。
「くくく…。審神者に任命されて、嫌だと答えた人間を初めて見たぞ。」
余程おかしかったのか、そう言ってまた小さく笑い出した。
「そう、だね。僕も初めて見るな。」
続いて燭台切も苦笑しながら言った。
レンはそれを見て、やや不服そうに顔を顰める。
こんのすけは焦り、静かに言い募った。
「審神者になれるのですよ。この本丸の主となり、刀剣達を束ねられる名誉な神職なのです。何がご不満なのですか?」
レンはそれを聞いて益々顔を顰める。
彼女にしてみれば、何の説明にもなっていない。
「どんな名誉な職なのか知りませんが、この方達を束ねて何をするのか、どうすればいいかの説明が何も無く、ただ主になれと言われても、引き受けようがありません。
だいたい、何故私なのですか?そんな名誉な事ならば、何も知らない私よりもっと適任がいるのでは?」
それを聞いた鶴丸は益々笑い転げた。
「審神者を知らないって…。そんな人この国にいるんですか?」
こんのすけはレンの言葉を受けて呆然とした。