第34章 和解
「…悪かった。」
鶴丸が、いつの間にかレンの側に座り、頭を下げていた。
「ぬくぬく育っただなんて、痛みを知らないなんて言って悪かった。」
レンは言葉に詰まる。
気にするな、とも言えないし。酷い、とも言えない。
「知らなかったんだ。キミがそんな辛い半生を生きてきたなんて。夢で見る程、今も苦しんでるなんて。」
「え゛…?」
その言葉を聞いたレンは、冷や汗が吹き出す。
「兄弟で殺し合いをさせられたんだろ?その時の夢を未だに見るって…。」
「ま、待って待って。なんであんたが知ってるんだ!?」
レンは驚く。鶴丸に話した覚えはない。
「え?いや、光坊から聞いたんだが…。」
「なんで知ってるの!?」
レンは燭台切に詰め寄る。燭台切にも夢のことは話した覚えはない。
「この前、一緒に晩酌しただろう?その時に聞いたんだけど…覚えてないの?」
レンは目を見開いた固まってしまう。
「お、覚えてない…!」
酒に呑まれただけでなく、自身が秘することまで話してしまうなんて…。
ーあの時は小さい頃の事を話して、リヨクとの事を話して、それから…。
それから先の記憶がない…!
レンは改めて酒の怖さを知る。
情報収集で酒の席が使われる理由を、身をもって思い知った。
ー今までの奴らが阿呆なんじゃない。喋っちゃうものなんだ…。
「い、今まで夢のことは、誰にも言ったことがなかったんだ…。」
忍として、自身の秘密を喋るなど、あるまじき失態だ。
「レン…?あのな、だから悪かったって話を…。聞いてるか?」
鶴丸がそろりそろりと切り出すも、レンは聞いてるんだか聞いてないんだかわからない。
「喧嘩両成敗にしましょうか…。」
全ての色が抜けたように呆けたまま、彼女はぽつりと呟いた。