第33章 喧嘩
一方のレンは…。
彼等の予想は概ね合っていた。
何故、鶴丸の言葉にこれ程までに怒りが湧き起こったのか、唐突に気づいたのだ。
今まで、幾度となく似た様なことは旅先で言われ続けてきた。
『いいわねぇ、旅人って気楽そうで。私も旅したいわ。』
『いいなぁ。俺も何も気にすることなく、暢気に旅したいもんだぜ。』
『俺も自由気儘に国中旅して歩きたいわ。』
鶴丸に言われた事と、ほぼ同じだ。悪意があるかどうかは別として。
けれど、悔しいだの、腹立たしいだの、思った事は一度だってなかった。
なのに何故、鶴丸の言葉にはこれ程まで腹立たしいと思ったのか。
簡単な事だ。彼等に気を許していたから。自身の存在を認めてほしいと思っていたからだ。
だから”らしくない”行動になった。
ー何をやっているんだ、私は…。
帰ることなど、すっかり忘れていた。
木の葉の役に立つ。その志は今も生き続けている。
須く命を使い切る。自身の誓いも忘れてはいない。
ーそう、私は木の葉に帰る。
ー本来、関係ない人達なんだ。
私が関わるべきじゃない。
怒るのはお門違いというものだ。
「はは…。本当に何やってるんだろ、私…。」
レンは空を見上げながら乾いた笑いを零した。