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君に届くまで

第33章 喧嘩



「兄弟の子を殺してから、自分の感情がよくわからなくなったんだって言ってた。
それを聞いて、僕は思ったんだ。あの子はまだ、その痛みに向き合えないから、その痛みから逃れる為に感じない様にしているんじゃないかって。
…繰り返し夢に見るんだって。その時の事を。夢はそれしか見ないんだって言ってたよ。気が休まらないよね。見る夢がそれしかないなんて。」

「主様が、何で僕の願いを聞き入れてくれたのか、僕分かった気がします。」

五虎退が涙を浮かべながら静かに言う。

「…そうだな。俺も何となく理解できた。」

「うん、ボクも…。」

薬研と乱は悲しそうに微笑む。

「それから紆余曲折あって、里を抜けて。自分の一族を探したんだって。生まれ故郷は見つかったんだけど、全滅していたって言ってた。そこで氷の技を覚えたみたいなんだ。一族が残した資料を基に。」

「それはわたくし達も一緒に聞きました。」

「僕達もです。」

「俺も聞いた。」

鳴狐、五虎退、大倶利伽羅が答え、薬研も頷く。

「その上、ここに迷い込んできた理由が、殺されかけたから、だよ。これでも鶴さんは”ぬくぬくと育ってきた人間”って言える?」

燭台切は静かに問いかける。
鶴丸は俯き、黙り込んでしまう。

「責めている訳じゃないんだ。でも、もうちょっとあの子に歩み寄ってほしい。悲しい思いをしてるからって訳じゃないけど。それを抜きにしても、あの子にはあの子なりの優しさがあるんだ。それを鶴さんにもわかってほしい。」

燭台切は願いを込めて鶴丸に想いを伝える。

「…悪かった。もう、あの子と喧嘩はしない…。」

漸く鶴丸の気を鎮めることが出来た。
他の者も、一様にほっとした様子だ。
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