第33章 喧嘩
「何で止めたんだ!」
レンは気が治らず、止めに入った燭台切に八つ当たりをしだした。
いつもの口調ではなくなっている。これがレンの本来の姿なのだろう。
「そりゃ止めるよ。身内で喧嘩なんて不毛だもの。」
「あいつが喧嘩売ってきたんだ。私は買っただけだ!」
「それでも、傷つけ合うことに意味はない。」
燭台切はきっぱりと言い切る。
彼の言葉に理解は出来ても、納得がいかない。このままでは終われない。
「だとしても、このまま”はい、そうですか”なんて言えるか!」
悔しい!何とかしてあいつを負かしてやりたい!
レンの中には、そればかりが占めている。とてもじゃないが気を鎮められない。
その様子を見て燭台切は困り果てる。どう説得したらいいものか…。
「…レンちゃん、どうしちゃったのさ?いつもの君らしくないよ?」
しかし、意外や意外。
この一言でピタリとレンは止まる。
燭台切はレンの様子に驚いた。
こちらを見上げた彼女の目は驚きに見開かれ、瞳には僅かに哀しみが宿っていたからだ。
「そう、ですね…。ちょっと、頭、冷やしてきます…。」
「え、いや、ちょっと…?」
レンは目線を彷徨わせながら言うと、燭台切の動揺もそっちのけで、とぼとぼと部屋を出て行ってしまった。
ー傷つけた?けど一体何に傷ついたんだろう?
燭台切は頭を捻るが、原因が思い当たらない。
部屋の反対側では、鶴丸が何やらまた暴れそうな雰囲気だ。皆で説得に当たっているが、彼も気が治まらないんだろう。
やれやれと、燭台切は立ち上がる。
どうやら先に鶴丸の気を鎮めなければ事が進まない様だ。