第33章 喧嘩
「確かにおかしいと思ったよ。レンちゃんだけならまだしも、僕達まで一緒に本丸を出されるのは、理由がわからなかった。」
燭台切はレンの言葉に賛同する。
「理由は、奴が来ることをこんのすけは知っていたからです。政府の奴等はここが封印が解けている事を知り、更には邪気が薄らいでいる事に気づいた。その原因を摘み出す為に、奴を本丸に連れてきたんです。」
「主様の神気を追ってきた、あの人ですか?」
五虎退の問いにレンは頷く。
「実際に奴は、私のごく薄い神気を感じ取り、私の位置を把握していました。それに政府の奴等も、探し出せと奴に命令していましたし。こんのすけは”私”と”私の痕跡”を隠したかったんだと思います。」
「それでは、まるで貴方が勝手に住み着いた様では…。」
江雪の言葉の先をレンは受け継ぐ。
「正に政府にとって、私は勝手に住み着いた野良猫に等しいでしょうね。だからこその焼き討ちではないかと。」
「…猫の子一匹摘み出す為に、この本丸を丸焼きにしたって言いたいのか?」
鶴丸のその視線は明らかに疑惑を孕んだものだった。
「…あなたは私が政府の手先だと思っている様ですが、では手先である私が今ここに居る利点はなんですか?本丸は焼け、住む所どころか食べる物も無い。人間は住んでおらず、いるのはあなた方だけなんですよ。」
怒気を孕んだ言葉にレンは淡々と返す。
「やはり、人間は人間が恋しいか。」
鶴丸は小馬鹿にした様にレンに吐き捨てる。
「人間がいる所には流通があります。金銭が動くんです。金銭が動く所には働き口があり、私は飢えずに済むんです。恋しい恋しくないの問題ではありません。」
理にかなったその答えに、鶴丸は返答に詰まる。
「もう一度聞きます。利点は何ですか?」
その言葉に、鶴丸の眼差しが一層鋭くなる。