• テキストサイズ

君に届くまで

第32章 本丸跡地で



「光坊。大広間が無事だったから、みんな移ったぞ。」

そう時を置かずに、鶴丸が燭台切を呼びに顔を出した。

「鶴さん、ありがとう。とりあえず休むところがあって助かったよ。」

「…キミ、起きてたんだな。」

鶴丸はレンを見咎めると、みるみる表情を硬くした。

「おはようございます…。」

それを見たレンも表情が硬くなる。

「俺は先に行ってるからな、光坊も来いよ。」

鶴丸はレンに返すことなく去って行った。

「鶴丸、本丸を焼かれてからずっとああなんだ。…レンが悪いわけじゃないのにな。」

太鼓鐘は苦笑してレンに話した。

「私が本丸を焼け野原にしたと思ってるんですか?」

「レンは政府の手先だとは思ってるかもな。」

太鼓鐘は肩を竦めて見せる。

「じゃ、俺は先に広間に行って休んでるぜ!」

太鼓鐘はそう言うと、鶴丸を呼びながら彼の後を追いかけていった。

「…ごめんね、レンちゃん。」

燭台切は苦笑する。

「燭台切は悪くないんですから、謝る必要はありません。」

「でも気になるんじゃないの?」

「気になるか、ならないか、と聞かれれば、気にはなりますが、それだけです。気にしたところでどうしようも出来ないでしょう。」

大和守は遠慮がちに聞くが、レンは意に介さない。

「でも嫌な気持ちになったり、いじわるしてみたくなったりは…しない?」

「…何の為に?」

「やられたらやり返す、みたいな…。」

加州は怖々聞いてみると、レンは嫌そうな顔をする。

「めんどくさい。」

めんどくさいんだ…。変わった子だな。
彼等は、安心していいのか、呆れるべきなのか迷う。
/ 1263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp