第32章 本丸跡地で
厨に行くと、既に燭台切が中を片付けていた。
しかし、外観も中も見事に真っ黒だ。骨組みが焼け残っただけでも奇跡のようだ。
この中に本当に使えるものなんて残っているのだろうか、と思うような有り様だ。
「あれ、レンちゃん、もう大丈夫なの?」
「はい。チャクラは半分程戻っていますし、問題ありません。」
「額、切ってるよね?あと、所々切り傷があるし。」
そう言われてみれば切ったな、と額に手を当てる。
まだ柔らかいが、瘡蓋にはなっているから問題ないだろう。
擦り傷は…いつ負ったんだろう?まぁ、少し痛むくらい問題ないだろう。
「その内治るから平気です。」
それを聞いた燭台切はがっくりと肩を落とす。
「女の子なんだからね…。少しは気にしようね…。」
「男として扱ってもらっても大丈夫なんですが。」
レンは大して気にした様子もなく答える。
燭台切はついに頭を抱えてしまった。
「…何がダメなんですか?」
レンは隣にいた加州にそっと聞いてみる。
「要するに、燭台切は女の子として扱いたいし、レンには自覚を持ってもらいたいってことなんじゃない?女の子は女の子らしく。」
「げ、一番苦手…。」
「…そうだろうね。そんな感じする。」
レンは苦い顔をし、加州は呆れた様に彼女を見た。
「すごかったんだよ、レン。本丸に帰る時、寝ぼけてるのか、あっちふらふら、こっちふらふらで、木にはぶつかるし、獣道で派手に転ぶし、坂は転げ落ちるしで、見ていられなくて。だから俺と大倶利伽羅で、交代でおんぶして帰ってきたんだよ。」
「あー…、切り傷ってもしかしてその時の?」
「だと思うよ。まともに歩けない感じだったし。」
「そうみたいですね。途中から記憶がありません。まぁ、でも運んでくれてありがとうございます。」
「どういたしまして。」
「とにかく、ちゃんと傷は残らないように治そうね。」
燭台切は話に割って入いると、レンの肩を両手で掴み、説得にかかる。
「は、はい…。」
彼女は燭台切の迫力に引き気味に従った。