第32章 本丸跡地で
「何か、収穫はありましたか?」
レンは加州の笑いが治まるのを待って2人に問いかける。
「じゃーん!見て見て!戦装束が無事だったんだよ!」
大和守が嬉しそうに両手を広げた。
「よくあの火事で傷ひとつなく残りましたね。」
「そうなんだよね。不思議なことに、この装束の周りだけは焼け残ったんだ。」
「へぇ。じゃ他は?」
「あとは全滅。」
大和守は困った様に笑いながら肩をすくめる。
「成程、それは家探しする価値が出て来ましたね。」
「え?」
「燃え方が疎らなのでしょう?なら他に使えそうな物があるかもしれないじゃないですか。それでみんな本丸にいるんですね。」
「…家探しって…、泥棒じゃないんだから。まぁ、そういうこと。レンも来る?」
加州は少し呆れた様に笑いながら誘う。
「行きます。厨を探したいです。」
「ほんとに2人の予想通りだね。」
大和守は面白そうにくすくすと笑う。
「2人?」
「燭台切と薬研だよ。レンは必ず厨を探したがるだろうって。あの2人とはよく一緒にいたの?」
「…うーん、割といたかな…。」
そう言われてみると、その2人と一番関わり合いが多かったかもしれない。でも行動が読まれているのはなんだか複雑だ。
「まぁ、とりあえず行きましょう。話はそれからです。」
レンはロープで布団を纏めるとすたすたと歩き始めた。加州と大和守は顔を見合わせて、レンに倣った。