• テキストサイズ

君に届くまで

第32章 本丸跡地で



「何か、収穫はありましたか?」

レンは加州の笑いが治まるのを待って2人に問いかける。

「じゃーん!見て見て!戦装束が無事だったんだよ!」

大和守が嬉しそうに両手を広げた。

「よくあの火事で傷ひとつなく残りましたね。」

「そうなんだよね。不思議なことに、この装束の周りだけは焼け残ったんだ。」

「へぇ。じゃ他は?」

「あとは全滅。」

大和守は困った様に笑いながら肩をすくめる。

「成程、それは家探しする価値が出て来ましたね。」

「え?」

「燃え方が疎らなのでしょう?なら他に使えそうな物があるかもしれないじゃないですか。それでみんな本丸にいるんですね。」

「…家探しって…、泥棒じゃないんだから。まぁ、そういうこと。レンも来る?」

加州は少し呆れた様に笑いながら誘う。

「行きます。厨を探したいです。」

「ほんとに2人の予想通りだね。」

大和守は面白そうにくすくすと笑う。

「2人?」

「燭台切と薬研だよ。レンは必ず厨を探したがるだろうって。あの2人とはよく一緒にいたの?」

「…うーん、割といたかな…。」

そう言われてみると、その2人と一番関わり合いが多かったかもしれない。でも行動が読まれているのはなんだか複雑だ。

「まぁ、とりあえず行きましょう。話はそれからです。」

レンはロープで布団を纏めるとすたすたと歩き始めた。加州と大和守は顔を見合わせて、レンに倣った。
/ 1242ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp