第31章 大和守安定の目覚め
「なになに?どういう事?」
ショックから立ち直った大和守はレンと加州の話に割って入る。
「私はこことは別の世界から来ていて、私の世界では今の様な事は日常茶飯事なので、つい癖で。
…ところでどなたですか?」
レンは近寄ればわかるかと思ったが、近くで見ても見覚えがない。こんな可愛らしい子なら覚えてると思うのだが…。
「え!昨日一回起きた時に僕達顔合わせたよ!?」
「…すみません、覚えてません…。」
レンは全く覚えがない。なにせ今しがた目覚めたばかりだ。
「薬研の言った通りだったね。」
「何か言ってたんですか?」
「”大将は覚えてないかもな”って。」
「…何の事です?」
加州の言葉にレンは首を傾げる。
大和守はその様子を見て小さく笑った。
「すごい寝ぼけてたって事。
改めて、はじめまして。僕は大和守安定だよ。」
「あぁ、あなたが大和守さん。」
髪型が違うからわからなかった。
しかし、一見すると女の子にしか見えな…
「女の子じゃないからね?」
レンの視線に含まれる意味に気づき、大和守は即刻否定する。
「…あれ?”まだ”何も言ってませんよね?」
「語るに落ちてるよ!!」
首を傾げるレンに喰い気味で大和守は突っ込む。
加州はそれを聞いて、なんだか可笑しくなった。
「ふふふ…、あはははっ!」
主とこんな風に何気ないことを言い合えるなんて、夢みたいだ。
ずっと願っていた。主と触れ合いたい。可愛がってほしい。
いつまでも、ずっと。安定と一緒に…。
嬉しくて。
可笑しくて。
涙が出る。
「そんな、どツボにハマる程面白かったの?」
安定とレンが怪訝そうに見ているけど、笑いも涙も止まらない。
暫く高台に加州の笑い声が木霊した。