第31章 大和守安定の目覚め
意識が浮上する。
なんだかふわふわ温かい。
薄ら目を開けると、布団が見える。が、その向こうは土だ。ゆっくりとコウロギが通り過ぎていく。
「あれ…?」
首を擡げて辺りを確認するがやっぱり外だ。
しかも、誰もいない。
どういうことかと慌てて起き上がり、側にあった靴を履く。
そこは避難した高台だった。
ーいつの間に戻って来たんだろう。
下を見下ろすと本丸が見える。
何やら探し物でもしてるのか、見覚えのある姿が多数見える。
「何やってんの?」
レンはぽつりと呟き、自身も本丸に向かおうと近くの木に登り始めた。中腹まで来たところで下から声がした。
「あれ?レンは?」
「ほんとだ、いない。」
振り返ると、加州と大和守が真下いた。
「ここです。」
レンの声に2人は素早く反応し、上を向く。
「「え゛!!」」
2人はぎょっとした顔でこちらを見上げた。
レンはそこから飛び降り、音も無く着地する。
「えぇぇぇぇ!!!どういうこと!?ねぇどういうこと!?今結構な高さあったよ!?」
初めて見た大和守は驚きで腰を抜かし、加州は遠い目をした。
「…何やってるんですか?」
対してレンは怪訝そうに大和守を見返す。
「いや、あんたのせいだから。」
「え?何で?」
加州の呟きに、レンは心底不思議そうに答える。
カルチャーショックが伝わらない、と加州は頭を抱えたくなった。
「だから、普通は木に登らないものなの。しかも垂直に登るなんて人間技じゃないから!ありえない事だから!」
「あー…、そうでしたね。忘れてました。」