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君に届くまで

第31章 大和守安定の目覚め





眩しい光が目に刺さる。

濃い緑と土の匂い。

ざわざわと話し声も聞こえる。

薄ら目を開けると、そこは外だった。
緑の葉が風に揺られてざわざわと鳴り、揺れる合間に届く木洩れ陽が煌めいていた。
外なのに布団の中という、なんともチグハグな状態にぼんやりとしながらも疑問が湧く。

声のする方に首を向けてみると、戦の帰りなのかみんな戦装束のままだ。

ふと、体が動かない事に気がついた。
僕は焦って静かにもがきなから下を見ると、布団ごとロープで縛られている。

「…え?」

幸い本体である刀も一緒に縛られている様だけど、それにしたって何故こんな状態に置かれているのだろう。

「…きよ、みつ。」

清光を呼んだつもりが、上手く声が出なかった。

何とかしなきゃ。

腕を動かそうとしても肩の下辺りをしっかり固定されているので上がらない。せめて上体を起こそう頑張るが、腰を固定されて叶わなかった。

冷や汗が流れる。

今がどんな状況かわからないけど、縛られているってことは良くないんじゃ…。

「安定!?」

清光が上から覗き込んできた。

た、たすかった…。

「た、たすけて…。」

情けなくも僕は清光に助けを求めた。

清光にロープを外してもらい、漸く人心地つけた。
僕はゆっくり上体を起こすと軽く体を伸ばした。体がバキバキだ。
清光にお礼を言おうと振り返ると、彼は静かに泣いていた。

「え?清光?」

僕は焦って彼に向き直る。

「バカ!!バカ安定!!なんで俺を庇ったんだ!!」

その一言で思い出した。
そうか、あの時…。

「…ごめん。必死だったから…。」

よく考えると、清光には辛い事だったな…。

清光との殺し合いを命じられて、嫌で嫌で堪らなくて…。
どうせ死ぬまで殺し合いを止められないなら、決着は早い方がいいと打ち合う瞬間、刃を反転させた。
思惑通り清光の刀が峰に深々と入り、これは折れるだろうなと覚悟したんだ。
そこで記憶が途切れている。

清光はそっと僕を抱き寄せてしっかり抱きしめた。僕の寝間着を掴むその手は震えている。

「もう、やらないで!二度としないで!」

「ごめん…。」

僕はあやす様に清光の背を軽く叩いた。
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