第29章 急襲
彼女は血の気が引くという体験を生まれて初めてした。
ー何やってるんだ、あいつらは!!
「全員山へ走れぇぇぇ!!!!」
有無を言わさず大声で叫び、自身も山へ走り出す。
彼らは弾かれたように動き出し、慌てて山へ走り出した。
後ろを振り返ると、レンを追いかける異形が過半数だが、薬研達を見咎めて追いかけていく奴もあった。
これでは薬研達が囲まれてしまう。
レンは立ち止まると素早く印を組み、一気にチャクラを練り上げる。
「水遁、大瀑布!」
レンを追いかけてきた異形の者たちは突然現れた洪水の様な波に一気に本丸に押し戻される。
「氷遁、氷華縛!」
その水が引かないうちに一気に水を凍らせ、辺り一帯を氷の海原に変え、異形諸共氷漬けにする。
レンは息を切らし、少し様子を見る。
今の技でチャクラの過半数を使ってしまった。もう一回大瀑布を出せるかは微妙なところだ。
あの男は出てこない。
ー術に嵌まったか、最悪足止め位は出来ているだろう。
そう信じたい。
薬研達に目を向けると、氷華縛に捕まった異形を前に刀抜いたまま微動だにしないでいる。
レンは急いで彼等の元に駆け寄ると、そのまま薬研の首に腕を巻き、締め上げる。
薬研は突然のことに反応できず、レンの成すがままだ。
「あんた達、阿呆でしょ!!?」
薬研はレンの腕を叩きながら降参の意思を示す。
「何で結界の中で待ってないんだ!!?」
レンが怒鳴った直後、地を震わすような咆哮が轟き、次いで、凍らせた大瀑布に脅威の速さでヒビが入っていく。
レンの背筋に冷たいものが走る。
あれが破られたら勝ち目は無い…。