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君に届くまで

第3章 手当て



「な、ん、で!人間が!屋根の上にいるんだよ!」

加州は屋根の上にロープを使ってよじ登り、よたよたと女が逃げた方向へと向かう。

思わず叫んでしまったのは不味かった。そのせいできっとあの人間は逃げ出してしまったのだから。

ーでも、考えてもみてほしい。
 誰が屋根の上に人がいるなんて思う?それも平家だよ?おかしくない?
 そして、さっと危なげなく、あっという間に逃げちゃった。猫かよ。
 そんなん見たら叫びたくもなるよ!

加州は心の中で悪態をつきつつ、必死で後を追う。

「めちゃくちゃ怖い。高所恐怖症になりそう。
なんでこんなとこ、すいすい走れるんだよ、チクショー!」

暫くおっかなびっくり進んで行くと、渡り廊下手前辺りの屋根の上で頭を抱えている女を見つけた。

ーあの人だ。

加州は慎重に近づくと、その人は振り返り立ち上がった。

「頼むから、逃げないでね。」

そう言いながらおっかなびっくり近づいていく。
女に逃げる気配はない。

あと少しというところで片足を滑らせてしまう。
瓦なのでつかまりようがない。

落ちる!と覚悟した時、背中側の腰辺りを掴まれ、落ちる事を免れた。
驚いて顔を上げると、さっきまで少し離れた所にいた女が支えてくれていた。

「大丈夫ですか?」

若干呆れ顔だ。

ー誰のせいだと思ってるんだ!

「あんたがこんな所にいなけりゃ登る必要も無かったんだけどね!」

「え、私のせい?」

不服そうだ。

ー不服なのはこっちだ!

「とにかく降りて。話をして。
人の家に勝手に入ったんだから、俺達には話を聞く権利がある!違う?」

そう言うと、その人は何故か微妙な顔つきをしながら、頷いた。
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