第29章 急襲
青年は、咳き込みながらもギラギラした目でレンを睨み付けた。
「思い通りにならないのが、こんなにイライラするなんて思わなかった!
いいよ、イイモノ見せてあげる!」
そう言って彼は徐に起き上がると、指をパチンと鳴らす。
すると、落武者の様な奴がぞろぞろと出て来て、レンを囲んだ。
警戒しながら周りを見ていると、青年は見知らぬ男の子の首根っこを掴みながらレンに見せて来た。
「この子知ってる?ぼろぼろで動けないみたいなんだ。この子が堕ちたら、どうなると思う?」
レンは無言で戦闘態勢に入る。
「見せてあげる。」
青年は下卑た笑いを浮かべながら、自身の刀をその男の子に突き立てた。
耳を突き刺す様な断末魔が辺り一面に響き渡る。
次いで男の子の姿は掻き消え、代わりに黒い靄と一緒に白い骨の蛇が出て来た。口には短刀を咥えている。
レンは目を瞠る。
あれは小夜が禍ツ神になりかけた時の幻影だ。それが実体化し目の前にいる。
「楽しいでしょう?」
青年は至極嬉しそうにレンに笑いかける。