第28章 嵐の前の静けさ
「レンちゃん、入ってきていいよ。」
「済みましたか。それで、どうやって連絡を取るんですか?」
「こんのすけ、って呼ぶだけで頭の中で会話出来るようになったよ。」
「口に出さなくても会話が出来るって事ですか?」
「そうだね。慣れないとそのまま言っちゃいそうだよね。」
燭台切は笑う。
「では、わたくしは帰らせていただきます。」
こんのすけは見計らったように話を切る。
「はい。ありがとうございます。あ、あと一つ。昨日来た、黒を基調としたあの青年は何者ですか?」
レンはこんのすけを真正面から見据える。
その視線を受け流しながら、こんのすけは答えた。
「…わたくしは何も存じません。では、失礼致します。」
そう言うと、ポンと消えた。
「…レンちゃん。こんのすけは何を隠しているの?」
「燭台切も隠していると思いますか。」
「ってことは、レンちゃんも何も聞かされてないの?」
「はい。質問しても手応えがありません。」
「…僕も悪い予感がするよ。」
燭台切は言い知れぬ不安が自身に広がっていくのを感じた。