第28章 嵐の前の静けさ
レンは燭台切を厨に呼び出し、事情を説明すると、こんのすけと会わせる。
燭台切は、こんのすけの審神者に対する対応に密かに疑問を持ちはじめた。
「では、私は外で待っていますので、終わったら呼んでください。」
「…中にいなくていいの?」
「契約を結ぶのだと聞いていますから、私は中にいない方がいいでしょう。」
レンは淡々と告げると本当に外に出てしまった。
「…燭台切殿。では宜しいですか?」
「…どうぞ。」
こんのすけの首元の鈴が輝き始める。
「燭台切殿、わたくしの鈴に触れてください。」
燭台切は指示通りにすると、自身の手の甲が光り、模様が浮かび上がる。
驚いていると、鈴が光を失い、同時に手の甲の模様も消えた。
「今のは…?」
「主様のご指示は、連絡が付くように、とのことでしたので、眷属同士として連絡が取れるように致しました。」
「…何でレンちゃんと契約しないの?」
「…何分手違いがありまして、手間取っているのです。ですので、代理として燭台切殿と契約を結びました。」
「そう…。どうやって呼べばいいの?」
「”こんのすけ”と名をお呼びくだされば、わたくしに届きます。さすれば頭の中でのみ、会話することも可能です。」
燭台切は試しに呼びかけてみると、頭の中にこんのすけの声が響く。
「OK。通じるようだね。」
「…但し、お呼び出しの強制力はございませんので、わたくしが現れないこともあることを念頭に置いてくださいませ。」
ー強制力がない、か。
そこがこの契約の要なのだろう。
「分かったよ。但し、こちらも審神者代理として呼ぶからにはレンちゃんの意向を汲んでいるってことを忘れないでね。」
燭台切は受け入れる代わりに、こんのすけに釘を刺す。
こんのすけは、ぐっと口を真一文字に結び頷いた。