第28章 嵐の前の静けさ
レンは薬研と一緒に部屋に行くと、乱が起きていた。
「主さん、大丈夫なの?」
彼は心配そうに駆け寄る。五虎退から話を聞いたのだろう。
「大丈夫です。それより、今からあなたの手入れをしますから刀を持ってきてください。」
乱はその言葉に驚く。
「ボクの?何で?」
「薬研と五虎退の希望なので。それに聞いていると思いますが、今日視察に人が来ました。雲行きが怪しいので、時間がある今のうちに済ませたいんです。」
乱は顔を強張らせ、神妙に頷く。
「わかった。今すぐ持ってくるね。」
「薬研、他に手入れする者は?」
「あと1人、厚藤四郎だ。頼めるか?」
「チャクラが続く限りでやります。持ってきてください。」
その時、乱が戻ってくる。胸には二振りの刀を抱いていた。
「持ってきたよ。こっちがボクで、こっちが厚だよ。」
「悪いな、乱。」
「お安い御用だよ。」
「始めます。」
夜の帳が降り、辺りが闇に包まれた頃、漸く手入れが終わった。かなり急いで手入れをしたので、仕上がりに不安は残る。
「出来ました。乱、体はどうですか?」
「うん、いい感じ!痛みが無いってサイコーだね!」
乱は嬉しそうに体を伸ばして動かした。
「よかったね、乱!」
五虎退も嬉しそうに乱を見る。
「こちらは厚さんです。薬研、確認してください。」
「うん、大丈夫だと思うぜ。」
薬研は刀を受け取り、中を確かめる。
「細かい傷が残っているようでしたら、すみませんが、塗り薬を使ってください。」
「わかった。」
「残りの玉鋼は私が貰ってもいいですか?」
「構わないが、何に使うんだ?」
「あと1人約束しているんです。薬研、加州さんの部屋へ案内してください。」
「加州のか?」
薬研は驚いてレンを見る。
「はい。残りの玉鋼で加州さんの手入れをします。」
薬研はそれを聞いて神妙に頷く。
「わかった。行こう。」