第27章 視察
「今更ですが、審神者ってそんな地位の高い役職なんですか?」
「本当に今更だな…。
そうだな、歴史修正主義者が現れ始めてから、その立場は強くなっていって、今じゃ結構な地位があるって聞いてるぞ。」
薬研は、知らなかったのか、と驚きながらも自身の知っていることを話す。
「ほんのひと握りの人間にしかなれないんだって。神気を多分に内包していなければできないしね。」
燭台切も自身の知っていることを話し出した。
「日本の歴史の根幹を守るから、凄い優遇されるらしいぜ。」
「成程…。椅子取りゲームにライバルは要らないって事ですか。」
見えてきた。そうなると次は何が何でも探しに来るか、或いは…。
「嫌な予感がしますね。」
レンは考えながら呟いた。
「どうして?」
燭台切と薬研は不思議そうにレンを見る。
「もし、敵が敷地内に侵入して隠れていたとします。炙り出すとしたらどうしますか?」
2人は顔を見合わせる。
どうって…
「しらみ潰しに探す?とか?」
薬研は首を捻りつつ答える。
「それでも見つからなかったら?」
「罠を張る?」
燭台切も当てずっぽうに近い答えを挙げる。
「もっと、簡単に出来る方法があると思います。」
「もっと簡単に?」
薬研は怪訝そうな面持ちでレンを見る。
「はい。私だったら、丸ごと家屋を潰して廻ります。刀剣はその過程で封印、回収されるでしょう。」
「…まさか、そこまで…。」
燭台切は、思いもつかなかった方法に絶句する。
「地位があるなら財力もあるんじゃないですか?
住処を奪って、建て直してしまった方が確実に追い出せると思いますし。」
「…本当にやると思うか?」
薬研は不安げにレンに尋ねる。
「分かりません。ただ、あっさり引いたのは、労をかけずに私を追い立てる算段があるからと思うのが、自然だと思うんです。」
燭台切と薬研に動揺が走る。
「勿論、罠を張っている可能性もありますから、当面は遠征中止でお願いします。
それと、残りの玉鋼を使って手入れをします。」
レンはそう言って薬研を見た。
「今からか?」
「はい。いつ何が起こるかわからないので、やれるうちにやっちゃいましょう。」