第27章 視察
陽が中天を昇りきった辺りで視察の面々は帰っていった。
それを確認すると、影分身を高台に一人残し、山を下る。
薬研達は裏門から入ると、それぞれの部屋へと散っていった。
レンは鳥居のそばまで来ると、影分身を出し、視察の者が残っていないことを確認し始める。
「残ってはいないみたい。」
本当に何をしに来たのだろう。
伏兵を残すでも無く、只々、人間が本丸に居ることを確認したかっただけなのだろうか。
だとすると、奴らにとって何が不都合なのだろう。
謎だらけだ。
レンは見張りとして影分身を残し、部屋に戻った。
「レンちゃん。」
燭台切が部屋の前で待っていた。
「どうしました?」
「いや、転移装置見て来たのかなって思ってさ。何かあった?」
不思議そうなレンに燭台切は苦笑しながら尋ねる。
「特に異常は見当たりませんでした。あの人達は一体何をしに来たのでしょうね。」
「大将。」
薬研が顔を出した。
「あなたも様子見ですか?」
「…ってことは燭台切の旦那も?」
「まぁね。なんか気になっちゃって。」
「転移装置周辺の異常はありませんでしたよ。」
レンがそう言うと、薬研は腕を組み、考え込んだ。
「…そうか。てっきり大将を見つけて追い出しに来たのかと思ったんだが…。なんだろな、このあっさりとした感じは。」
「自分で言うのも何ですが、私いい事してると思うのですが…。何が気に入らないんでしょう?」
「その”いい事”をされると困るから探しに来たんだろうさ。他の奴に権威を持っていかれたくないんだろ、たぶん。」
この際に、聞いておこうとレンは口を挟む。